インシリコデータ株式会社関連ブログ;Blog of the In Silico Data Ltd..

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 In this blog, I discuss and write various themes which I cannot edit on the
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2013/02/18

学会発表/パンフの値と実際の実験の値の差。その2:Differences between experimental value and value of the presentation at the meeting / pamphlet. The second report.

◇学会発表やパンフレットで使われている分類率、予測率、相関係数、決定係数の指標はどうして高い値が多いのかなーー?
その2:
 Why the value that a classification rate, a predictive rate, a coefficient of correlation and determination used by a presentation at the meeting and a pamphlet shows so high and excellent value? The second report.

 以前、上記タイトルで本ブログに書かせてもらいました。

 前回のレポートではデータ解析の特殊な利用あるいは操作を行なう事で、高い相関係数や決定係数を作為的に実現できることを示しました。この時、特に書きませんでしたが、これらの問題以外にもパンフレット値と実際の計算値のギャップを大きくする要因が、システムを利用するという立場とシステムを開発するという全く正反対となる二つの立場の違いによって引き起こされます。また、化学というアナログとコンピュータというデジタルとのギャップという観点での議論も出来ます。今回は、これらの点についてまとめてみます。実際は、さらにこれら以外の要因もギャップの形成に影響しているのですが、今回は省略します。

 システムを利用するというユーザの立場で考えると、システムを利用する場合の留意点や工夫すべき点が浮かんできます。システムの効率が最大になるように利用者が留意すべき点等、以下にまとめる内容を思い浮かべながらシステムの扱い方等について考えてみてください。すると、なぜ公表値と自分が行なう実行結果がこうも違うのかについて、ある程度理解できると思います。

◇システム開発側と利用するユーザとのすれ違い

 システムを利用する場合、常に以下の諸問題について理解しておく事が必要です。理解がなければ、パンフレット値と自分の出した値の大きな差異に驚くことでしょう。システムが公表するパンフレットの公表値は、常にベストの条件下にある「瞬間風速」であるという事を意識しておいてください。極端な場合、同じ化合物を用いてもAさんとBさんで結果が異なる事もあり、たとえパンフレットの中で使ってある化合物であっても結果が異なるという結果を招きかねません。

 この問題はシステムの扱う問題が化学に関する問題であるという事から発生します。留意すべき点はいろいろありますが、全て説明すると大変なので、ここでは典型的なことを例にとり簡単にまとめます。この内容から、他の事象について考えてください。

 システムを開発する立場にいると、アナログである化学とデジタルであるコンピュータとの橋渡しを常に考える必要があります。この情報変換が正しく行なわれているか。さらには、利用者が変わっても情報が正しく伝えられるか。また、アプリケーションとしての整合性も整えることが求められます。これらの様々な要求に答え、かつ様々な問題点を解決する事が必要になります。以下に、化学上の問題をデジタルであるコンピュータ上に乗せるための留意点を化合物構造式を扱うという観点で典型的な事例を例にとり、簡単にまとめます。

*化合物構造式の取り扱い関連
 化学システムである以上、化合物のシステムへの入力が必要です。一般的に我々が二次元構造式を書けば、上手に書く人や、形がゆがんでしまう人、上下関係が逆であったり、さらには裏表が逆だったりします。しかし、人間は利口なので、このような様々な形の化合物構造式を見ても、同じ化合物であるという事を認識します。
 でも、コンピュータはどうでしょうか。もし、これらの化合物を異なる化合物として認識すると、当然実行結果が異なってしまいます。検索しても期待した化合物が出てこなくなるし、パンフレットにあるような値がでない、あるいは間違った答えとなるという事になります。

・二次元、三次元構造式のシステムへの入力時の扱い
(内容により、パンフレット値と実行結果に大きな差が出ることがあります)
 化合物の構造式は全く同じ化合物であっても、「絵」としての構造式は書く人により異なります。構造式をきれいに書く人と下手に書く人、上下逆さまに書く人や裏表を逆に書く人等、全く同じ化合物が書く人によりルックアンドフィールが全く異なってきます。
 化学システムは入力者の違いや書き方の違いを吸収する事が必要ですが、システムの利用目的や、二次元/三次元構造の違いなどでシステムの対応に差異があり、利用目的の違いによる機能的な限界も出てきます。

・化合物構造式の書き方による、システム実行への影響
 先に述べた化合物構造式の作図上の問題だけでなく、化学には厄介な問題があります。全く同じものが、異なった複数の書き方で書かれ、両方ともに正解となる場合があることです。典型的な例はニトロ基で、イオン型と非イオン型の表記があります。また、良く知られた有名なものではケト・エノール互変異性体がありますし、芳香族の表示も、共役型と非共役型があります。
 システムの機能により変わりますが、これらを同じ置換基として認識するソフトと、別の置換基として認識するソフトがあります。この差はシステム開発者の思想やシステムの適用分野や目的により変わります。この事実を知らないと、ユーザが使ったときに期待する結果が得られないという事になります。

・二次元/三次元構造式の扱い
 先の問題は化合物の二次元/三次元を扱う時、特に頻繁に生じます。二次元で入力された場合、書く人により形が異なります、これを三次元に立ち上げると、異なった三次元構造式となってしまいます。このようなことが起きないようにプログラムではいろいろな工夫が払われていますが、システムにより程度の差があります。この事実も知っておくべきことです。化合物の三次元構造式を扱うために、いろいろなコンピュータソフトウエア技術が展開されています。立体化学の扱いも、プログラムの利用目的等で基本が変わりますので注意が必要です。

・プログラムのデフォルト設定(データの再現性に関する問題)
 量子化学計算は、解析結果の説明がしやすく、データの値も細かく出ますので、詳細な議論が出来ると考えられますが、その扱いにおいてはかなりの注意が必要です。例えば、計算時の軌道関数、最適化の繰り返し回数、ストップさせる時のエネルギー値、ローカル/グローバルミニマ、他等の様々な設定が存在し、これらは同じ条件でなければ同じ値は出てきません。これも、パンフレット値と実行値の差が出る原因となります。

◇誤差が大きくなり、追試が出来なくなるという問題

 前記のような様々な問題が解決されなければ、パンフレット値と実行値の値が違ってくるのは当然です。理論化学計算を行なうと、議論が厳密に行なわれているように感じます。しかし、対象となる化合物系の構造式が複雑になってくると、前記の様々な問題の誤差が積み重なり、差異が大きくなります。極端な場合、パンフレットや学会発表等の結果の追試が出来なくなるという事になります。

◇システム利用する時の注意点

 化学システムを利用する場合は、システム開発者のみならず、システムを利用する側にも十分な考慮や留意が必要であることを改めて認識してください。すると、パンフに書かれている公表値との差が大きくなる点に関してある程度理解できますし、完全ではなくとも対策を考えることも可能となります。
 繰り返しになりますが、システム利用者は、化学というアナログの情報をコンピュータというデジタルで処理する場合の様々な問題点を意識しつつ実行する事が大事です。注意しますが、以上の事実はプログラムのバグではありません。システムが正しく動く上での、化学とコンピュータの適合性の問題なのです。
 一方で、システム開発者は可能な限りアナログとデジタルの差異をユーザに意識させずに、正しい解析を実行できるように機能を備えることが必要です。ユーザは、そのような問題を意識することなくシステムを利用し、無条件に実行結果を信用するのですから。


文責:株式会社 インシリコデータ 湯田 浩太郎

2013/02/07

医療診断におけるスタートレックスタイル技術とゴジラスタイル技術:Medical diagnosis by the Star Trek technology and the Godzilla technology

◆医療診断における技術の進歩について:

About progress of the technology on medical diagnoses


 医療分野における診断技術の進歩が著しいようです。医療診断には大きく物理的、化学的および生物的の3分野がありますが、これらそれぞれの分野で検査技術が急激に進歩していることが大きな理由のようです。ここでは、化学検査における診断技術で最新の分析技術を用いた診断(スタートレックスタイル)と、私の記憶にある従来からのアナログ的な技術(ゴジラスタイル)における診断について個人的となりますが、感想を以下にまとめます。

◇最新のスタートレック(Star Trek)技術と、従来からのゴジラ(Godzilla)技術:

Newest Star Trek technology and traditional Godzilla technology on diagnosis of breath


 人の吐く息を分析して病気の診断をするという研究が進んでいるそうです。

 呼気を分析して診断するというのは素晴らしい発想だと思います。もし成功すれば、今までとは全く異なる診断ルートや手法を開発することになるので、新しい分野が開けてきます。大きなインパクトがあります。診断の基本原理はメタボロミクスにおける尿や血液の代わりに呼気が用いられたと考えればよいと思います。


・スタートレック型呼気診断 (Star Trek style diagnosis of breath)
 このようなチャレンジが具体性を帯びてきたのは主として機器分析技術の発達によるところが大きいと言えます。先のトピックスにも書いてありますが、特に呼気に含まれる揮発性有機分子(VOC)の割合が100万分の1から1兆分の1になる(parts-per-million (by volume) to parts-per-trillion range)。これがリアルタイムで分析可能なようになってきたという技術の進歩が大きいと思います。
 研究者はこの技術はスペクトル解析技術のRAFT(real-time air fingerprinting)が基本であり、非侵襲性(non-invasive)で高速診断になるということで説明しています。確かに、記事の写真を見るとStar Trek的な雰囲気が出ています。

・ゴジラ型呼気診断(Godzilla style diagnosis of breath)
 この記事を見て思い出すのは、呼気を用いて診断するという発想は昔もあったという事です。私が最初に知ったのは、呼気を調べて肺がんの診断を行うというアプローチでした。当時は分析技術が進んでいなかったので、犬を用いて肺がん患者特有の呼気を学習させ、肺がんの可能性があると反応(吠える等?)させるというものでした。もっとも、これが実用化されたとは聴いておりませんが・・・。何か、犬が診察室にいて患者の呼気のにおいを嗅いでいるという状況は????ですね。
 ただ、当時感じたのは呼気も他の診断要素と同じように使えるのだという事でした。医者の診断は問診、患者の様子、外見、血液や尿の化学検査、超音波やX線やMRI等の画像診断と様々な情報を利用しますが、呼気もその一つになりうるという事でした。ただ、当時は分析技術が呼気診断が出来るほど進んでいなかったので、犬の嗅覚を利用するという事で、結構真面目に取り組むべきことだったのでしょう。
 

◇呼気診断の可能性:

Potency of the diagnosis of breath

 分析技術が発展してきたので、このようなことへのチャレンジも現実化を帯びてきたのでしょう。私自身は、呼気診断の有効性を一つの大きな可能性のあるチャレンジと考えています。メタボロミクス的な考えで見ると、呼気の中にも代謝化合物はVOCとしていろいろ入っているはずです。病気によってこれらのVOCの種類や割合も大きく変化する事は明白ですし、病気の種類によって、O2、CO2、N2等の比率も変わるはずです。

 記事を見ると、診断データを集めるための被験者を集めているとか、分析機器の開発試験になるとか、他にも研究グループがあり、画像診断や体内流体解析を行う等のチャレンジがされているようですね。まさに、「Star Trek-style」的な診断手法にチャレンジしている様子が感じられます。
 
 私は呼気診断にはメリットがいっぱいあると思います。もし、CIR-MSやPTR-TOF-MSがコンパクトで車に積めるならば、救急車内での先行診断も可能ですし、集団検診等でも威力を発揮するでしょう。これらは、本格的診断の前に行うプレスクリーニング的診断ですが、診断出来る病気の種類も圧倒的に多くなる可能性があると思います。いままで、診断の空白地帯とされてきた現場での高速・簡易診断が開けてくると思います。実用化にはまだまだ時間がかかるでしょうが・。

◇診断実施のためのデータ解析:

Data analysis for the breath diagnosis

 いずれにしても、本研究はメタボロミクスの大きな枠に入ります。本格的に研究が走ればスペクトルのフィンガープリントデータを用いた病人と正常人との比較をデータ解析で行ない、より精度の高い診断を行なえる診断環境を整える必要がでてきます。このような研究でも多変量解析/パターン認識のデータ解析技術が重要となってきます。
 
 犬を使うゴジラ型の診断から、今回のスタートレック型の診断への移行は時代の流れと感じています。


文責:株式会社 インシリコデータ 湯田 浩太郎



 

2013/01/09

動物実験代替法の動き:The recent trend of Alternative Animal Experiments in EU

EUにおける動物愛護団体の動物実験禁止への運動と動物実験代替法の動き:

◆オーストリアのウイーンで見た、動物愛護団体の動物実験禁止運動の現場
    昨年8月にオーストリアのウイーン(VIENA)で開催されたEuroQSAR 2012にポスター発表で参加していた時、会場に行く途中オーストリアの国会議事堂の前を電車が通るのですが、たまたまその同じ場所を別の日に電車で通っている時、EUでの動物愛護団体による動物実験禁止運動の現場を見ることが出来ました。

    上の写真はオーストリアの国会議事堂の前から撮りました。この国会議事堂は観光の上での大きなスポットとなっています。
    この国会議事堂の前を市電が走っているのですが、次の日に電車の中から国会議事堂の写真を撮ったのが次の写真です。
    国会議事堂の前に仮の支柱を建て、そこから大きな垂れ幕がつり下がっています。垂れ幕の写真を見れば、動物愛護団体が動物実験禁止を訴えた内容であることがすぐにわかります。写真を拡大してみるとわかりますが、注射針がウサギの眼に突き刺されているイメージが感じ取られます。実際には注射針を刺さずに液体を点眼しているのですが・・・。ウサギの眼の愛くるしさと、注射器の痛々しいイメージが見る人に動物実験の残虐性を強く訴えています。
    こちらの写真は、先ほどの主たる垂れ幕の脇に地面の上に置かれた横断幕の様子です。

    日本国内にいると、西欧諸国、特にEUにおける動物愛護団体や環境保護団体の力が強いという話は良く聞きます。しかし、日本国内の現状から推測するとそのような活動の状況や、社会への浸透力、影響力といった事はなかなか推測できませんでした。実際に現場で活動している人々は若者が中心で行なっていました。活動を支える人々の層の厚さがわかるような感じがします。
 今回のように、実際にその運動をしているところをみると、EUの人々の動物愛護に対する感情や意志は日本と異なり、本物であり、極めて強いものであるという事を改めて感じました。

◆動物実験代替法とEUにおける動物実験禁止の動き
  このような動物愛護団体の強い後押しもあり、EUにおいては今年の3月以降、皮膚関連研究での動物実験データの利用禁止(事実上での動物実験禁止)が制度として動き出します。現在、皮膚関連研究分野ではこの動物実験に代わるIn Vitro試験の確立が急がれており、その有力な動物実験代替法の一つとしてインシリコによるスクリーニングが注目されています。
  当然、EUにも大きな市場を有する日本の化粧品や関連企業も対応に動き出しており、この流れを受けて日本動物実験代替法学会も大きく動き出しており、その年会等も昨今急速にその参加者を増やしております。

◆動物実験代替法とインシリコスクリーニング技術
 では、動物実験代替法におけるインシリコスクリーニング関連技術としてどのようなものが考えられるのでしょうか。皮膚関連研究分野での適用には、従来から展開されている薬理活性探索を目的としたインシリコスクリーニング技術の適用はその基本原理上適用困難です。一方で、皮膚関連でもADMEを主体としたPK/PDシミュレーションによるアプローチは可能ですが、薬物動態だけでは安全性を評価する事は出来ません。丁度、薬理活性探索と毒性評価をADMEで議論するのは極めて困難であるのと同じ関係です。

◆化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)によるインシリコスクリーニングの歴史
 現在、毒性評価に基本原理上から適用可能な手法として化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)技術があります。毒性評価への化学多変量解析/パターン認識の適用自体はかなり昔から適用研究がなされてきましたが、当時からの適用条件から、実験を行なって評価するのが最も確実であるとして、インシリコによる毒性評価は殆ど重視されてきませんでした。
 現在と異なり、動物実験も行なえるし、評価すべきサンプル数も多くなく、またインシリコによる予測自体が当時の極めて貧弱な計算機環境、さらにはデータ解析手法自体も幼稚という条件下では、やはり熟練した実験科学者による実データ重視が当然の帰結でした。

◆時代の変化と技術の進歩による新たな毒性評価へのチャレンジ
 現在は、一昔前と比較して研究に関する環境が様々な観点で大きく変化してきました。最大の変化は動物実験が行なえなくなるという変化でしょう。これは、先にも書きましたように、最終的には実験データを利用するという「実データ主義」が通用しなくなったことを意味します。
 この流れは、環境保護団体の強い後押しもあり、化合物毒性に関する化合物規制(REACH)が実施された流れと逆になります。EUはもともと化合物毒性に関しては「実データ主義」が強力な地域でした。しかし、世界の多くは化合物の毒性評価を全てにわたって実施するのは実用的観点から不可能であるとして、実データ主義と距離を置いていたのですが、これを振り切って規制を実施しました。REACHも試験適用期間を過ぎて、本格運用期間に入ってきました。REACH規制で化合物の毒性データが充実してくると、それらのデータを用いてインシリコスクリーニングによる毒性評価信頼性も大きく向上する事となり、相乗効果が生まれます。

◆インシリコデータによる毒性(安全性)評価へのチャレンジ
 インシリコデータの湯田は、化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)による化合物の毒性評価という研究業務を、留学先のアメリカペンシルバニア州立大学のJurs先生が開発されたADAPT(Automated Data Analysis by Pattern recognition Techniques)を用いて行ない、その部分開発や日本へのシステム導入を行ってまいりました。また、この分野での長い経験から、従来手法によるデータ解析手法をそのまま用いた毒性評価には限界があると見極め、化合物の毒性(安全性)評価に特化した新たな解析手法となる「KY(K-step Yard sampling)法」を開発しました。さらに、化合物の特性を利用し、与えられたサンプルグループ内で最高の予測パフォーマンスを出すことが出来る「テーラーメードモデリング」の技術の開発にも成功し特許化致しました。この二つの基本技術は化合物の毒性(安全性)予測を大きく改善するポテンシャルを持ちます。
 株式会社インシリコデータは以上の二大技術を基本とし、長期にわたり経験してきた化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)技術のノウハウを駆使しつつ、新しい時代の要請に答えるインシリコスクリーニングの技術支援を行なってまいります。

◆化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)によるインシリコスクリーニングの特徴
 化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)によるインシリコスクリーニングの特徴は、その基本原理から適用範囲が毒性(安全性)のみならず、創薬に関係する全ての特性に適用可能であるという点です。化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)によるインシリコスクリーニングではその予測対象として薬理活性、ADME、毒性(安全性)、物性等の一連の創薬に関係する全ての特性を予測対象とするjことが可能です。一つの基本的なアプローチで多くの種類の特性を予測できることは、予測項目単位に予測手法を変えることと比較した時、大きな利点を持ちます。この点でも、化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)によるインシリコスクリーニングの優位性が際立ってきます。
 この事実から、インシリコデータは化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)技術の長期にわたる経験やノウハウ、そして新たに開発された技術を融合し、会社としての最終目的となる「並列創薬(Parallel drug design)」を提唱します。さらに、「並列創薬」における個々の特性予測が完全(100%)となった時に実現する「一段階創薬(One step drug design)」の実現を目指して継続的に研究努力を続けます。


文責:株式会社 インシリコデータ 湯田 浩太郎



2013/01/03

新年明けましておめでとうございます:Happy New Year! May this year will be happy and fruitful.

  新年明けましておめでとうございます。今年も、インシリコ創薬関連研究のさらなる展開目指して頑張りますので、皆様のご支援をお願いいたします。


◆インシリコ創薬関連研究
   (In silico drug design related research works)

1.「一段階創薬(One step drug design)」を目指した、「並列創薬(Parallel drug design)」の
  改善研究
2.「統合概念(Integrated concept)」に基づいた「統合インシリコスクリーニング(Integrated
   in silico screening)」の改善研究
3.「実験動物代替法(Alternatives to animal experiments)」 を目指した、インシリコ
  スクリーニング手法の改善研究
4.毒性のない化合物の展開や規制を目指したインシリコ毒性スクリーニングの展開研究

◆KY(K-step Yard sampling methods)法のさらなる展開と
 適用事例の拡大
    (Further deployment of the KY method, and expansion
  of an application example)

1.KY法のさらなる展開研究:クラスタリング、マッピング、要因解析、等々
2.KY法の適用分野の拡大研究:様々な適用分野への拡大
3.KY法の普及に努める


文責:株式会社 インシリコデータ 湯田 浩太郎



2012/09/19

化学データ解析。こんな時どうするの?リスト:How do you do for those data analysis and chemical conditions ?

◇データ解析実施時の様々な状況:

Various situations that should be solved before the data analysis executed


  データ解析を実施する時、様々な状況に遭遇します。 信頼性の高いデータ解析を行うには、これらの起こりうる問題について正しく対応/処理しなければなりません。 私のブログにて、一部ではありますが既にこれらの問題点に関する記述と、留意点や対応の仕方をまとめてあります。

  以下に示される様々な問題は、データ解析を正しく行う上で解決すべき重要な項目です。 しかし、多変量解析/パターン認識の実行においては、データ解析手法そのものの理解が優先され、データ解析を実行する上で問題となるこれらの事項はあまり気にしないか、ないがしろにされているのが現状のようです。 実際、これらの事項が無視されても、データ解析自体は実行され、結果は出てきますので・・・。 しかしこの場合、データ解析結果の保証はありませんが・・・。

  データ解析はデータを入れて実行すれば終わりというものではありません。 様々なデータ解析手法を実行するソフトウエアは多数あり、簡単に手に入ります。 しかし、これらのソフトウエアで提供されるデータ解析手法を正しく実行し、信頼性の高いデータ解析を実現するためには、データ解析実行前や途中で発生する様々な問題を解決する事が必要です。 正しく、かつ信頼性の高いデータ解析を行ない、その結果を解析してさらなる活動や研究につなぐ。 これが、データ解析を行う上で最も重要な事項となります。 

  以下にリストアップされている様々な事項は、実際にデータ解析を行おうとすると、データ解析実施前に真っ先に解決しなければならない問題です。 これらの問題点に対処することなく、単に「データがあったからソフトウエアを実行した」というような表面的なデータ解析を行なうと、多くの場合は真に求めたい結果ではなく、フェークな解析結果となり、これらに翻弄されてしまいます。 このようなことに陥る前に、正しくかつ信頼性の高いデータ解析を行う事を心がけてください。 手法の理解も大事ですが、その手法の効果を100%出し切るようにデータ解析を行なう事も極めて大事なことです。 以下に示される様々な問題点を解決し、間違いが無いようにするための知識や理解を深めておくことが、安心してデータ解析を行うための重要なポイントとなります。

◇リスト


1.サンプルに関する様々な問題
 1-1.サンプル数が少ない時
 1-2.サンプル数が多い時
 1-3.データサンプリングの重要性
 1-4.ネガサンプルの重要性

2.パラメータ数に関する様々な問題
 2-1.パラメータ数が少ない時
 2-2.パラメータ数が多い時

3.欠損データの扱いは?
3-1.欠損の割合
 3-2.種々補完法

4.最小サンプル数は?

5.サンプルポピュレーションの偏りはどう解決するの
 5-1.クラスポピュレーションの限界比率は

6.予測率向上の手法とは
 6-1.サンプルの小グループ化
  ・類似サンプル群
  ・グループ分け(官能器群等)
 6-2.データ解析手法上での工夫
  ・線形から非線形へ
  ・コンセンサス法
  ・「テーラーメードモデリング」
  ・KY法(二クラス分類およびフィッティング(重回帰))

7.分類率と予測率の関係
 7-1.分類率 >= 予測率
 7-2.クロスバリデーションと外挿

8.線形問題と非線形問題

9.手法間連携
 9-1.意味ある連携
 9-2.意味のない連携

10.サンプル数が少ない時に安心してデータ解析を行うには
 10-1.限界数以下(計算自体が出来ない)
 10-2.2サンプルを用いた重回帰

11.パラメータからの情報読み込みと情報量・分類性
 11-1.パラメータの種類
 11-2.プログラムにより値が変わる(LogP等)パラメータ群と
      値が変わらない(MC等)パラメータ群

12.クラスタリングの特徴と限界
 12-1.様々な条件によりクラスタリングの結果が大きく変わることへの対応

13.次元減少、圧縮、変換、分解等の特徴と使い分け

14.特徴抽出(パラメータ選択)の意義と手法
 14-1.特徴抽出の意義
 14-2.主たる特徴抽出手法
  (a)パラメータとしてのチエック
  (b)統計的原理や手法を用いたアプローチ
  (c)最適化法等を利用したアプローチ
  (d)データ解析の種類により異なる特徴抽出アプローチ
  (e)データ解析手法での個別特性に特化したアプローチ

15.矛盾データの扱いと発見

16.パラメータの桁数の違い(オートスケーリング:正規化(normalization))

17.ウェイトベクトルの読み方

18.パラメータ同士の演算(演算パラメータ)

19.過剰適合

20.過剰適合とチャンスコリレーションの違い

21.クロスバリデーション(リサンプリング)手法と意義

22.サンプル抽出(外れサンプルの扱い、データの品質)

23.ネガティブサンプルの重要性

24.同値(同じデータ)サンプルが複数入った場合
 24-1.重みが変わる時と変わらない時(LLM等)

25.パラメータデータが不均衡の時(1/0 データで片方が数%しかない時等)
 25-1.全サンプル内でパラメータデータの割合が不均衡な場合
 25-2.クラス内でパラメータデータの割合が不均衡な場合
 25-3.クラス内のサンプルデータが全て同じ値の時
 
26.連続変数でも、データが無い時は0になる場合の扱いや不均衡度

27.分野(化学)特有の問題
 27-1.幾何/立体異性体
 27-2.互変異性体
 27-3.ニトロやニトロソの表現
 27-4.塩や含水(溶媒)化合物の扱い
 27-5.芳香族の扱い
 27-6.三次元構造の問題
 27-7.ポリマー等

28.サンプルデータの重複(同一化合物が同一活性、同一化合物が複数(矛盾)の活性)

29.データ解析指標はどのようなものがあって、どの程度の値が出ていればいいの?
 29-1.二クラス分類
 29-2.フィッティング(重回帰)

30.マッピング手法の違い

31.一元一項対応と一元多項対応問題

32.異なるプロトコルによる実験データの扱い上での注意と考え方
 32-1.細かな実験条件の違うサンプルデータの扱い(マージ、スプリット)
 32-2.マージを進める上での留意点と考え方
 32-3.スプリットを進める上での留意点

33.多クラスデータ解析の二クラス分類手法での扱い
 33-1.多クラスサンプル群の二クラスでの扱い

34.統計、多変量解析およびパターン認識の違い


  今後、ここに掲載された内容に関してより細かな解説を行なってゆきます。 また、ここで討論される解決手法は絶対的なものではありません。 もっと良い方法があるかもしれません。 それは、データ解析を行なう研究者の方々が個別に考えて対処してください。
  編集および湯田の都合上、掲載等の順番が上記リストと異なったり、掲載内容の重複や組み合わせ、また掲載時期も不規則になるかと思いますが、この点お許しください。 また、ここに掲載されたリストは、あくまでも暫定版です。 今後、上記のような項目がさらに追加されると思います。 化学データ解析に関心のある研究者の方々は、時々本ブログをチエックしていただければと思います。

  ここで示された項目は、化学多変量解析/パターン認識の実行時に知っておく、解決すべき事項です。 もちろん、データ解析実施主体としての多変量解析/パターン認識に関する個々の手法に関する知識も必要です。 しかし、これらに関する情報はWEBや書籍等に多数記載されていますのでそちらを参照してください。 
  また、実際の現場でケモメトリックスという観点で化学多変量解析/パターン認識を実行しようとする場合は、上記留意点の他に、対象分野の知識、計算機化学/計算化学、コンピュータ等の関連技術について専門家レベルは必要ありませんが、ある程度の基礎知識程度は知っておいた方が良いでしょう。 でなければ、処理を間違って変なパラメータを作成したり間違った解釈をしたり、さらには無意味な操作を行なう、あるいはシステム内部で行なわれている処理の意味を理解せずに省略したりという、本人が気付かないで見過ごしてしまう様々な危険性が高まります。
  


文責:株式会社 インシリコデータ 湯田 浩太郎










2012/09/13

EuroQSAR2012参加報告(1):Report of the poster presentation on the EuroQSAR2012

◆ 第19回EuroQSAR2012参加報告:


  8月26日から30日にかけてオーストリアのビエナ(ウイーン)で開催されたEuroQSAR2012に参加およびポスター発表を行いましたので報告いたします。
     EuroQSARは二年ごとに開催される欧州を中心とした構造-活性相関(QSAR)および創薬に関する国際学会です。 現在、QSARに関する大きな国際学会は他に存在しないので、本シンポジウムは事実上世界最大の構造-活性相関関連国際学会となります。
     前回の第18回EuroQSAR2010は2010年にギリシャのロードス島で開催されました。今回は第19回目となりオーストリアのビエナ(ウイーン)のウイーン大学で開催されました。ちなみに次回の第20回EuroQSAR2014はロシアのサンクスペテルブルクにて開催予定です。


     以下では、今回のEuroQSAR2012で私が感じた内容につきまして簡単にまとめます。

◇EuroQSARでの主たる討論議題とその傾向: 
     QSAR、 ドッキング、 インシリコスクリーニング

     現在のEuroQSARでの主たる討論議題はドッキング手法による薬理活性向上を目指した創薬研究となります。 今回のEuroQSAR2012では、QSARの創始者であるHansch先生が昨年の5月に逝去されましたので、Hanschメモリアルが特別セッションとして設けられ、QSARに関する様々な講演がありました。 残念ですが、QSARのルーツであるHansch-Fujita法に関する研究発表は年々少なくなり、これに代わりドッキングによるアプローチの議論が増えました。 ドッキング自体も、当初は手法的な議論が主体でしたが、手法的な技術が完成に近付くにつれ、ドッキングの主たるテーマは高速バーチャルスクリーニングに重点が変わってゆきました。 現在のドッキングにおける主たるテーマは、ADMEへの適用拡大等の研究となっています。
  最近の顕著な傾向として年々増えている発表が、インシリコスクリーニングに関するテーマです。 これも当初は、ドッキングによる薬理活性主体の高速スクリーニングに関する発表が中心でした。 しかし、創薬の関心が薬理活性のみならずADME/T/Pにもシフトしてくるのに従って、徐々にドッキング以外の技術によるアプローチ、特に化学多変量解析/パターン認識によるケモメトリックス主体のアプローチが増えてきました。

*薬理活性スクリーニングから、ADME/T(毒性)/P(物性)スクリーニングへ
     化学多変量解析/パターン認識手法によるインシリコスクリーニングが増えてきた大きな原因は、スクリーニング対象が薬理活性から、ADME、毒性(安全性)そして物性等にも広がってきたことが大きな原因です。 ドッキング手法は基本原理から薬理活性のみを対象としたアプローチであり、薬理活性以外のADME、毒性(安全性)、物性等を対象としたインシリコスクリーニングへの適用は困難であり、特に毒性や物性への適用は基本原理より実施出来ません。 このために、薬理活性はもちろんのこと、薬理活性以外の諸特性にも適用可能な手法としての化学多変量解析/パターン認識手法によるインシリコスクリーニングが注目を浴びています。

◇インシリコスクリーニングでの展開

     EuroQSAR2012でも、薬理活性のみならずADME/T/Pを含めたインシリコスクリーニングへの研究テーマが急速に増えており、発表の数のみならず、研究の幅そのものの広がりを強く感じるようになりました。

1.サンプル関連の拡充と広がり

     今回の発表で感じたのは、インシリコスクリーニング実施上での環境整備への広がりで、基本となるサンプルデータ関連の環境がWEB上でのデータベース構築や一般公開というように、より大きな広がりを持つようになってきたことです。 創薬分野でもサンプル群の扱いや収集等が大きな問題となり、多数で高品質、かつ多様性のあるデータソースが求められるようになっています。 サンプル群の収集という観点ではインターネットを介したWEB上での展開が最も効率的で、広がりを持つという点で現在の技術としては最も効率的であり、これらを目指した発表が見られました。
     但し、私の毒性インシリコスクリーニングの経験から述べると、サンプルの集積も大事であるが、サンプルデータの質がもっと重要であり、この点での考察、例えば実験プロトコルの統一や充実、サンプルデータの評価基準や手順等の拡充が重要と考えます。
     HTSやコンビナトリアルケミストリーが広く普及した現在、創薬研究分野も多数のサンプル群を扱うビッグデータ時代に突入するのも時間の問題と考えられます。 今後は、単なるデータ集積から、集積データの品質が問われ、その後はビッグデータを活用するデータ解析技術の展開が大きなテーマとなるでしょう。今後のこの分野での展開が楽しみです。

2.インシリコスクリーニングに関する技術関連の展開

     ここではドッキングによる薬理活性インシリコスクリーニングに関する話はしません。 薬理活性も含めたADME、毒性および物性に関するスクリーニングを行う化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)によるインシリコスクリーニングに関する発表について感想を書きます。

  その前に、化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)によるインシリコスクリーニングという言葉や研究にあまり親しみのない方のために、簡単にその歴史をまとめます。
  なお、ケモメトリックスは分野を超えた総合的な研究分野(化学、コンピュータ、データ解析、適用専門分野、等々)となります。 このため、ケモメトリックスを構成する基本技術は様々な分野に及び、その適用分野も様々な研究分野に及びます。 日本で、このような多種多様な研究分野を総合的にまとめて教育を受ける場やチャンスは殆ど無いと思います。 これらの技術的な詳細は、インシリコデータのホームページに、ケースバイケースで記述しておりますので、ご参照ください。

*化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)によるインシリコスクリーニングとは?
  多変量解析/パターン認識によるインシリコスクリーニングの基本技術はケモメトリックスと呼ばれるもので、歴史的には古くから実施されてきました。 化学分野に多変量解析/パターン認識の技術を本格的に導入した最初の研究は機器分析の分野で実施され、Isenhour,Jurs及びKowalskiの三人により展開されました。
  その後Jursは構造-活性相関分野での展開を行い、Kowalskiは機器分析分野での展開を中心に研究活動しました。 ケモメトリックス(日本語での正式な訳語は「化学計量学」と呼ばれています)という言葉はKowalskiとスエーデンのUmea大学のWold(SIMCA法を開発し、その後PLS法を開発)により定義され、一つの新しい研究分野となりました。
  一方、Jursは化学多変量解析/パターン認識による構造-活性相関の展開を行ない、毒性研究を中心に展開しました。 しかし、毒性分野でのインシリコ(コンピュータ)需要は当時の状況では大きくなく、その後は構造-活性/毒性相関研究と物性や機器分析分野での研究と半々程度の割合で研究を継続しました。
  しかし、この間の研究で創薬関連分野での多くの特徴や特性を経験し、これらの諸問題を解決するための基礎技術の多くを開発しました。 例えば、機器スペクトルデータと異なり構造-活性/毒性相関分野ではサンプル数が極端に少ないこと。 あるいは化合物情報を細かに取り出すためのパラメータの開発。また、パラメータ数が大きくなるので過剰適合や偶然相関を防ぐための強力な特徴抽出手法の開発等々です。 通常の多変量解析/パターン認識研究分野では、これらの事象は殆ど発生する事がないので、対応する必要がありません。この結果、これらの問題に対する対応策はあまり情報が無く、まともに討論、開発されていないのが現状です。 これらの、化学、創薬、毒性研究塔を行なう上で解決しなければならない様々な問題に関する解決技術がJursにより精力的に展開されました。 
  Jurs研究室で開発されたこれらの基礎技術を取り入れたコンピュータシステムとして、ADAPT(Automated Data Analysis by Pattern recognition Techniques)が開発されました。 このシステムは、当時の技術の最先端を行くもので、ディスプレイ上で化合物構造式を直接扱う事が出来、かつ対話的に化学データ解析研究を行う世界初の化学多変量解析/パターン認識による構造-活性相関支援システムとなりました。
  私はJurs教授の下に留学し、リサーチアソシエートとして二年間働き、このADAPTの部分開発を担当しつつ、ADAPTを用いた発癌性予測に関する研究を行ないました。 当時、日本では殆ど自由に使う事が出来ないミニコンを用いて、毎日最新のデータ解析を行えることが本当にうれしく、充実した日々を送ることが出来ました。 帰国の時にはJurs教授より自分の研究に使って良いということで、ADAPTのソースコードを日本に持ち帰ることが出来ました。 その後、大学から富士通に移り、Jurs教授の許可を得て富士通の汎用コンピュータ上にADAPTを移植しました。 この時はミニコン上のプログラムを汎用機上で稼働させるという事で、多くの富士通の方々の技術的な支援を受けて移植を完了させることができました。

*化学多変量解析/パターン認識は、その基本原理から薬理活性やADME/T(毒性)/P(物性)等の全ての項目をターゲットとしたインシリコスクリーニングへの適用が可能
  現在、この化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)によるインシリコスクリーニングが注目を浴びつつあります。  これは、現在大きな問題となりつつあるADME、毒性および物性の分類、予測、評価を行う事が出来るためです。




  化学多変量解析/パターン認識でも当然ですが薬理活性を扱う事は可能です。  しかし、研究を開始するのに様々な基礎知識と技術が必要であり、また多くの創薬研究者にとり多変量解析/パターン認識はあまり親しみの無い学問です。 このために、化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)による創薬研究アプローチは敬遠されてきました。 結果として、昔はHansch-Fujita法、その後はドッキング等、創薬研究者が比較的取り組みやすく、かつ理解しやすい手法が薬理活性研究の主体となってきました。 
  しかし、時代が大きく変化し、創薬研究、特にスクリーニング対象項目が薬理活性のみならず、ADMEや毒性(T)そして物性(P)等に変化する事で、これらのインシリコスクリーニング研究分野での化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)の適用が必要となりました。

*EuroQSAR2012での化学多変量解析/パターン認識によるインシリコスクリーニング関連発表


  化学多変量解析/パターン認識によるインシリコスクリーニングを実施するためには、その基礎技術は多岐の分野に及ぶことを意識する事が必要です。 これはケモメトリックスという研究分野が多くの基礎技術から形成されるためです。
  化学多変量解析/パターン認識によるインシリコスクリーニングを実施する上で必要となる技術や知識は大きく3種類存在します。 この他にも、化学とコンピュータを結び付けるコンピュータケミストリーの技術も重要になりますが、デフォルトの事項として省きます。
  1.化合物を数値データ(パラメータ)に変換する技術
  2.多変量解析/パターン認識に関する技術
  3.ターゲットとなる薬理活性/ADME/毒性/物性に関する知識
  EuroQSAR2012での発表は3を除いた、上記の1および2に関する発表が中心となります。 それぞれの研究分野で発表がありましたが、技術的にブレークスルーと思われるアプローチは残念ですがあまり見られませんでした。 化学多変量解析/パターン認識の手法的には従来からのデータ解析手法が用いられていました。 もちろん、ADMEや毒性スクリーニングでの予測精度向上のためにコンセンサス手法を取る等の工夫はされていましたが、特に大きな精度向上につながった例は報告されていませんでした。
  私の経験では、特に毒性分野での分類および予測は、

  (1)対象サンプルの構造変化性が極めて高いこと、
  (2)扱うサンプル数が多くなること、
  (3)高い分類/予測率の達成が求められる

 という以上の三つの関門を突破する事が必要です。 私の従来からの経験では、これら三つの問題を従来から展開されている多変量解析/パターン認識手法をそのまま適用すること、さらにはどんなに工夫して優れたパラメータ等を開発しても、良好な結果を得ることは殆ど出来ないと感じています。 そのために、これらの毒性分野特有の諸問題を解決する全く新しいデータ解析手法としてKY(K-step Yard sampling)法を独自に開発しました。


3.ポスター発表に関しての感想

     今回私は「NEW APPROACH FOR QSAR AND QSTR TREND ANALYSIS ON LARGE SAMPLE DATA SET BY THE KY-METHODS」のタイトルで発表してきました。
  発表の趣旨ですが、私が開発したKY法は極めて多数のサンプル群の完全(100%)分類を実現するのみならず、QSAR的な、より精密な議論が可能になるという報告です。 このような精密な議論が可能となるのは、KY法の実施過程で対象サンプル群がきれいにポジおよびネガサンプル群にクラスター化され、かつ階層的に分類されるためです。従来手法によるデータ解析では、特に多数のサンプル群を扱う場合は一回のデータ解析で全てのサンプル群を対象として解析するために、完全分類実現には程遠く、サンプル数が多いために情報の整理が出来ないため、QSARレベルでの厳密な要因解析を行う事は殆ど不可能です。
  私のポスターでは前回のEuroQSAR2010での発表時と異なり、明らかに多くの研究者の方が聴きに来られました。 前回のKY法のデビューとなる発表では、完全(100%)分類実現という話を聞いても半信半疑という感じだったのですが、今回の発表では真剣に討論していただけたし、討論内容もより具体的なものへと明らかに変化していました。 その代表的な変化が、実際にシステムを用いて試してみたいという研究者が現れたことです。 また、私は覚えていなかったのですが、フランスの先生には「あの二本の判別関数を用いて分類する手法を開発した人ですね」と、声をかけてくれていただきました。 KY法の特殊なアプローチは記憶に強く残るようです。このように、今回のEuroQSAR2012では、KY法が徐々に認知度を増している様子を実感しました。















  

  次は、会場となったウイーン大学やウイーンの様子等について報告いたします。


文責:株式会社 インシリコデータ 湯田 浩太郎



2012/08/22

「最少サンプル数」に関する特許が日本で承認されました:The new technology about "the number of the minimum samples" was patented in Japan.


◇多変量解析/パターン認識における、「最少サンプル数」に関する特許が日本で承認されました



  本特許は、サンプル数が少ない条件下に行われる多変量解析/パターン認識によるデータ解析の解析信頼性を保つための手法に関する特許です。

      一般的に多変量解析/パターン認識を用いてデータ解析を行う場合、利用可能なサンプル数が少なくなってくると「チャンスコリレーション(偶然相関)」や「オーバーフィッティング(過剰適合)」等の問題等が顕著となり、データ解析そのものの信頼性が急激に低下してきます。 本特許はこのように、サンプル数が少ない時のデータ解析を安全に実施出来るようにするための操作技術に関する特許であり、この意味では基本特許となります。 


      サンプルデータを集めることが極めて困難な研究分野の場合、多変量解析/パターン認識によるデータ解析を行うには多くの場合困難が付きまといます。 本特許は、サンプル数が少ない場合であっても安心してデータ解析を実施する技術に関するものです。

      サンプルの総数が大きい場合であっても、例えば「KY法」を実施すると、ステップ(個々の繰り返し操作)数が大きくなり、最後のステップ近くになるとサンプル数が急激に減少し、解析に利用できるサンプル数が少なくなります。 この点で「KY法」を実施する場合、最終ステップに近づいてくるとデータ解析そのものの信頼性が落ちてくることになります。 このために「KY法」実施において、最後の方のステップではこのような問題を避けるべく最新の注意を払ってデータ解析を行う事が必要となります。 本特許はこのような場合にも適用可能であり、「KY法」の実施をより安全かつ容易にする特許となります。


◇ より具体的にはどのような特許ですか?


      サンプルの絶対数が小さい時、データ解析実施上での禁じ手である「チャンスコレレーション」や「過剰適合」が発生しやすくなり、信頼性の高いデータ解析を実施することが困難となります。 本特許は、このようにサンプル数が小さい時でも安心してデータ解析を行えるように環境を整える手法に関する特許です。

     サンプル数が少ないという事は、多変量解析/パターン認識を行う場合には様々な観点からデータ解析の信頼性に関する問題が出てきます。 この結果、データ解析自体が出来なくなる、たとえデータ解析が出来たとしてもその解析結果の信頼性が低くなる、等々の問題が発生し、先に説明しました「チャンスコリレーション」や「過剰適合」自体の問題も顕著化してきます。

     本特許は、サンプル数の絶対数が小さい時に行う多変量解析/パターン認識によるデータ解析のデータ解析信頼性を高度に保つようにすることに関する特許です。
     これらの問題に対して、仮想サンプルの創出という手法でサンプル数の問題を解決します。 つまり、サンプル数が少ないのであるから、サンプル数を追加してデータ解析を行うというものです。 この場合のサンプル追加に関する様々なテクニックをまとめて特許としたものです。

 内容に関しましては、今後時間がある時にまとめて本ブログにアップします。


文責:株式会社 インシリコデータ 湯田 浩太郎




2012/08/16

二クラス分類で、常に100%(完全)分類を実現する手法を公開いたします:


◆ 「チャンスコリレーション(偶然相関)」や「過剰適合(Over Fitting)」等のトリックを使うと簡単に良好な解析結果が得られます。 しかし、これは絶対に行ってはならない禁じ手です。



  以前、「常に相関係数を1(100%)とする秘伝中の秘伝を公開します」というタイトルでWEBにアップしました。 これは、データ解析でいわゆる「チャンスコリレーション(偶然相関)」を意図的に引き起こし、かつ「過剰適合(Over Fitting)」と称される禁じ手を上手に(???)利用することで、常に相関係数1(100%)を実現するものでした。 いわば多変量解析/パターン認識によるデータ解析では決して実行してはならない悪質な(本人がこのことに気がつかないと、大変な被害を受けますので常に注意してください)トリックを使うことで完全相関を実現したものでした。

  現在、多変量解析/パターン認識によるデータ解析はソフトウエアを使えば気軽に実行できるようになり、結果も簡単に出るようになっています。 本人が気付かないうちに前記の「チャンスコリレーション(偶然相関)」や「過剰適合(Over Fitting)」を起こしてしまうと、外見上は良好な結果が出たように見えます。 つまり、データ解析結果の指標(分類率や相関係数等)が良好な値となることが多くなります。 一般的には、これらの禁じ手を避けた正しいデータ解析を行う場合、良好なデータ解析結果を導き出すことは簡単なことではありません。 従って、これらの禁じ手に関する予備知識が無い状態のままデータ解析を行うと、大きな間違いを起こしているにもかかわらず、むしろ良い結果が出たと誤判断し、結果的に大きな被害を受けてしまいます。 多変量解析/パターン認識によるデータ解析を行う場合は、常にこれらの点に留意しつつデータ解析を行う事が必要です。 

  このようなマイナーな内容のことをわざわざWEBにアップしたのは、何も知らないでデータ解析を実行すると、とんでもない結果を導き出す事がありますよという、いわゆるデータ解析の内側に潜んでいる危険性を理解していただきたかったためです。



◇ トリックなしで、常に100%(完全)分類を実現する方法があるのでしょうか? ⇒ 「KY法」


  今回ここで紹介する手法は、先に述べたような禁じ手となるトリックを用いて100%分類を実現するフェークな手法ではありません。 データ解析の特性を上手に利用することで、トリック無く、真に100%(完全)分類を実現する手法です。 これは「KY(K-step Yard sampling) 法」と呼ばれる最新のデータ解析手法です。




◇ 「KY(K-step Yard sampling) 法」とはどのような手法ですか?


  従来、他のデータ解析手法では実現が遠く及ばなかった100%(完全)分類を、どんな厳しい条件下であっても常に実現させる手法です。 例えば、クラス間重なりが非常に大きく分離しにくいサンプル群、サンプル数が非常に大きい場合等です。 開発者の私もここまで出来るとは思っていませんでしたので、最初はビックリしました。 
  「KY法」はデータ解析の手順に、従来手法とは全く異なる考え方を導入しますので、この意味では他の人から見ると大きなトリックかもしれませんが、これは良い意味でのトリックです。 意外なことに、これだけのパフォーマンス(100%(完全)分類)を実現するにもかかわらず、この「KY法」は全く新しい理論(アルゴリズムや計算手法)の展開に基づいたデータ解析手法ではありません。「KY法」は、従来手法の内容をそのままにして、その運用方法を変えただけの手法にしかすぎません。 データ解析としての基本的なアルゴリズム等は従来手法そのままを踏襲しております。 いわゆる、「メタ手法」となります。 詳細はKY法のブログか、インシリコデータのホームページにアップされている「KY法」の説明、あるいは「分子科学会」のMolecular Scienceへの投稿(2モデルKY法)を参照してください。

  「KY法」は二クラス分類のみならず、フィッティング(重回帰)でも適用されます。 フィッティング(重回帰)で適用されると、従来手法で同じサンプルを用いて実行した場合と比較してはるかに高い相関係数や決定係数を実現します。
  この「KYフィッティング」によるデータ解析結果は、禁じ手を用いたフェークな操作によるアプローチは相関係数や決定係数の値を常に最大値の1(100%)を実現しますので、その相関係数や決定係数の値だけを比較するとフェークなアプローチには負けてしまいます。 しかし、この「KYフィッティング」は多変量解析/パターン認識によるデータ解析上での禁じ手(「チャンスコリレーション(偶然相関)」や「過剰適合」等)を一切使うことなく実施される正当な手法です。 しかも、従来のフィッティング(重回帰)手法をそのまま適用した時と比較すると、この「KYフィッティング」では極めて高い相関係数や決定係数が実現されます。


◇ 現時点で「KY法」は、二クラス分類3種類、フィッティング(重回帰)3種類の、総計6種類開発されています


  現在、二クラス分類用のKY法として3種類、またフィッティング(重回帰)用のKY法として3種類の総計6種類のKY法が開発されています。 これらの詳細に関しましては今後インシリコデータのホームページ、あるいはKY法のブログにて順番に紹介させていただきます。


◇ 「KY法」の特徴とは何でしょう?


  「KY法」は従来手法と比較して、劇的な分類率(100%)の向上および極めて高い相関係数や決定係数を実現します。 しかし、「KY法」内部で使われる基本的なデータ解析手法は、現在利用されているデータ解析手法そのもの(線形/非線形判別分析、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、アダブースト等)であり、「KY法」として全く新しい手法やアルゴリズム等が開発されているわけではありません。 単に、サンプル群の取り扱いと繰り返し操作を組み入れただけです。
  従って、「KY法」となるための特徴は以下に示す二つです。

 1.サンプル群(空間)の扱い手法の違い
 2.操作の繰り返し実行



  上記の手続きをとることで、「KY法」は他の手法には無い優れた特性を有する事となります。 分類率や相関係数等のデータ解析指標のみならず、対象となるサンプルセットは二クラス分類であるならば、クラス間重なりが極めて高いサンプル群を扱っても100%分類を実現します。 また、フィッティング(重回帰)でも残差の大きなサンプルセットを用いても、その相関係数を劇的に改良出来ます。 さらに、サンプル数が増えても完全分類や高い相関係数を実現します。
  従って、「KY法」が扱うサンプルの特徴は以下のようになります。

1.データ解析が困難なサンプル空間を持つサンプルセットであっても、高いパフォーマンスを実現する。
2.サンプル数がどんなに増えても、良好な解析結果を出せる



  要因解析を行うという観点でも「KY法」は優れた、便利な機能を有します。 「KY法」は対象とするサンプル群をより小さなサブサンプル群に分けることが出来るので、大量のサンプル群を一度に用いて要因解析するよりも、高い精度での要因解析が可能となります。 これは、用いたサンプル群のみならず、データ解析に用いたパラメータ群もより小さなサブセット化されているので、パラメータからの情報読み取りもサンプル同様に容易になります。
  従って、「KY法」を用いた要因解析の特徴は以下のようになります。

1.サンプル群やパラメータ群のサブセット化を実現する。
2.サンプルやパラメータを対象とした要因解析が容易になる


  「KY法」のもう一つの特徴は、データ解析手法としての柔軟性が高い事です。「KY法」で作成される判別関数や重回帰式は従来の手法を用いて作成されますが、一つの「KY法」の中で利用される複数の判別関数や重回帰式は、それぞれ異なる手法を用いて構築する事が可能です。
  例えば、2本の判別関数を用いた「KY法」では、線形および非線形判別関数を組み合わせて用いることが可能です。 しかも同一のステップ内で両方用いても良いし、個々のステップ単位で線形、あるいは非線形というように組み合わせることが可能です。
  さらに、一つの「KY法」内部で、2モデルKY法、1モデルKY法、モデルフリーKY法と個々のステップ単位で組み合わせて利用する事も可能です。 これらの組み合わせは、「KY法」を実行する過程でそのデータ解析の進行状況に応じて臨機応変に変化させることが可能です。


1.「KY法」内部で使うデータ解析手法の組み合わせ様式は自由
  例:同じステップ内で線形/非線形判別関数を組み合わせる
    異なったステップ単位で線形/非線形を組み合わせる
2.基本的な「KY法」自体も混在して利用可能
  例:一つの「KY法」中で、1モデルKY法、2モデルKY法、さらにはモデルフリーKY法等を組み合わせて利用可能




  以上、「KY法」の特徴について様々な観点からまとめてみました。 実に多くの特徴を有した手法であることを理解いただけたかと思います。

  このように従来手法をそのまま用いるのではなく、「KY法」として用いることで、従来手法では実現できなかった様々なことが簡単に実現出来るようになります。 現時点で「KY法」は、二クラス分類とフィッティング(重回帰)のデータ解析分野で適用可能です。 「KY法」の基本的な考えを適用することで、二クラス分類、フィッティング(重回帰)以外のデータ解析分野にも展開可能になるものと思いますが、これは今後の課題となるでしょう。

  「KY法」はクラス間重なりの大きなサンプル空間、あるいは分散の大きな空間といった、従来からのデータ解析手法では扱いにくく、良い結果を出すことが出来なかった分野での解析に強力な効果をもたらします。 また、「KY法」の基本原理(繰り返し操作)からわかるように、サンプル数がどんなに多くなってもその最高のパフォーマンスを保持する事が可能な手法です。 大量のデータ解析を扱う事が求められる今後のビッグデータ時代に、多変量解析/パターン認識の厳密なデータ解析力をそのままビッグデータにも適用できる強力な道具になるものと思います。


文責:株式会社 インシリコデータ 湯田 浩太郎




2012/08/12

多変量解析/パターン認識データ解析を行う時の最小サンプル数について:

◆ 多変量解析/パターン認識によるデータ解析を行う時の最小サンプル数はいくつでしょうか?


    実際に多変量解析/パターン認識によるデータ解析を行っていると、良く問われる質問として「データ解析を行う時の最小サンプル数を教えてください」という質問があります。

 私が行っている創薬関連研究分野では、データ解析に使えるサンプル数が少ないという事が特徴です。これは、一つのサンプルを作るのに時間と手間そして多額の費用がかかるのが大きな原因です。このため、“統計や多変量解析/パターン認識は多数のサンプルを扱うための手法”というイメージを持ち、あまりデータ解析に慣れていない研究者の方々にこのような質問をされる方が多いのだと思います。

  以下にまとめる「最小サンプル数」とは多変量解析/パターン認識(二クラス分類およびフィッティング(重回帰))を行う時のもので、統計等でアンケート用のサンプルを集める時の「最小サンプル数」とは考え方の基本が異なります。この点ご注意ください。
  多変量解析/パターン認識での基本は、「チャンスコリレーション(偶然相関)」の回避です。

 

 

◆ データ解析を行う場合の最小サンプル数は手法により変わりますが、以下のようになります


    ◇ 二クラス分類では4サンプル、フィッティング(重回帰)では5から6サンプルとなります。

   *但し、 データ解析に用いるパラメータとして1個だけ用いたとして・・。


    最小サンプル数は、正しいデータ解析を行った場合に必要となるサンプル数という事です。多変量解析/パターン認識によるデータ解析で正しい解析を行っているという保証は、その解析はチャンスコリレーション(偶然相関)を起こしていないという事が証明されている事であり、このような条件下でデータ解析を行うのに必要なサンプル数となります。

    先のチャンスコリレーション(偶然相関)の話でも述べましたように、信頼性指標(R)の値がその最低基準を超えていることが、多変量解析/パターン認識のデータ解析の信頼性を保証します。このため、信頼性指標(R)が最低とされる値の時のサンプル数が「データ解析時の最小サンプル数」となります。この場合、データ解析のコンディションは最低条件ですので、分母のパラメータ数は最低の数である1を採用します。この結果、上記の最小サンプル数を用いたデータ解析の実行時に利用可能となるパラメータ数は一個となります。パラメータ数が増えると、信頼性指標(R)の分母が大きくなりますので、最小サンプル数も大きくなります。
  *パラメータ数が1ということは、統計みたいな感じで、とても多変量解析/パターン認識とは言えないかもしれませんが・・・、とりあえず理論上でのお話です。お許しください。

  つまり、最小サンプル数はデータ解析に用いるパラメータ数と連動して変化します。

 データ解析に用いるパラメータ数が多くなると、最小サンプル数も大きくなります。


  従って、最小サンプル数として絶対的な値というものは決まっておらず、そのデータ解析に用いたパラメータの数に従って増減するというものです。簡単に考えるならば、最小サンプル数は二クラス分類の時はパラメータ数×4、フィッティング(重回帰)の時はパラメータ数×5から6と覚えてください。少ないサンプル数の時に、多数のパラメータを使えば良好な解析結果を出すことは簡単ですが、チャンスコリレーション(偶然相関)を引き起こしたとんでもない解析となります。

 但し、この基準は最低レベルの条件です。しいて確率的に言うならば10%程度の誤差発生のレベルです。この値を導く条件を厳しくすると(パラメータの取りうる値の数等)この誤差発生率の値はさらに大きくなります。従って、より安定した信頼性の高いデータ解析結果であることを保証するならば、先の信頼性指標(R)の値はこれよりもずっと大きな値が必要です。



◆ 多変量解析/パターン認識によるデータ解析実施上での基本的な考え


 多変量解析/パターン認識、特に二クラス分類やフィッティング(重回帰)では、通常の条件下では絶対に起こらないことが起きた、その結果であるという事が重要なポイントです。偶然に起こるのではなく、絶対に起こらないことが起きた。しかも、素晴らしい結果(高い分類率や高い相関係数)を伴って・・。従って、このような結果が出たからには、用いたパラメータ(説明変数)と目的変数との間には何らかの必然的な関係が存在するはずである。この必然性を解明するのが多変量解析/パターン認識における要因解析となります。これが、多変量解析/パターン認識による要因解析を行う上での最も重要な前提です。

 絶対に起こり得ない筈のことが、偶然にしかも簡単に起こる(つまり、チャンスコリレーション(偶然相関)が起こった)。このような条件下では何の必然性も存在しません。要因解析を行ってもフェークな結果に振り回されるだけです。

 例えば、総計100個(50個ずつの2クラス)のサンプルを用いて、わずか1個のパラメータで完全分類に成功したのであれば、この1個のパラメータは100個のサンプルを完全分類するための何らかの情報を持っているという事を疑うはずはありませんね。

 しかし、同じ完全分類であっても、100個のパラメータを用いた結果であるならば、これらのパラメータに二クラス分類に重要な情報を持っているとは考えにくいし、100個のパラメータの情報を解読するのも困難で、する気にもなりませんね。このような事を引き起こした人工的な事例としてフィッティング(重回帰)を例として、以前このブログにアップしてありますので見てください。



◆ サンプル数の大小と多変量解析/パターン認識


 正しいデータ解析を行うという前提であるならば、サンプル数が少なくなると利用できるパラメータ数も少なくなるので、良好な解析結果を出すことは難しくなります。また、サンプル数が少なくなると真の解析母集団との整合性が保ちにくくなるので、データ解析上での別の問題が大きくなってきます。このような問題を避けるには、良好なサンプリングが極めて重要です。こちらのサンプリング問題の方は明確な指標が見えないので、データ解析を行うという観点からは、より難しい問題となるでしょう。この場合は、データ解析研究者のノウハウが生きてくる仕事になります。

 このようなサンプリング問題を避けたいならば、可能な限りサンプル数を増やす努力が必要となります。

  信頼性指標(R)が同じとすると、サンプル数が大きいほどデータ解析時に利用できるパラメータ数は増えてきます。サンプル数が増えて、利用できるパラメータ数が増えるとデータ解析が楽になります。しかし、サンプル数が増えすぎると、こんどはサンプル中に含まれるノイズサンプルの絶対数も大きくなってきます。このようになると、ノイズ情報を嫌い(多変量解析/パターン認識ではノイズをノイズとして切り出せる技術が重要となります)、厳密な解を求める多変量解析/パターン認識の場合はデータ解析実施自体が困難になります。この点が、統計と多変量解析/パターン認識との大きな違いとなります。これとは逆に、サンプル数が少なすぎると、上でも述べましたように解析母集団を正しくあらわしているかという、サンプリングの問題が顕在化してきます。

    チャンスコリレーション(偶然相関)の問題はデータ解析に用いるサンプル数が少ない場合に特に注意しなければならない重要な問題です。常に多数のサンプルを扱う、あるいはサンプルを集め易い研究分野ではチャンスコリレーションについて強く意識する必要は無くなります。この問題は、サンプルを集めにくい創薬やその他の関連分野の研究で特に注意することが必要です。


◆ チャンスコリレーションと線形/非線形問題


 このチャンスコリレーション(偶然相関)の問題は今回まとめた最小サンプル数の問題に関係するのみならず、データ解析の線形/非線形問題にも大きく関与してきます。この場合は「過剰適合(Over fitting)」の問題も強く絡んできます。これらについては別の機会にまとめます。


文責:株式会社 インシリコデータ 湯田 浩太郎



2012/08/04

チャンスコリレーション(偶然相関)とは:Chance corelation

◆ 「チャンスコリレーション(偶然相関)」とは何でしょうか:

What is the "chance correlation" ?




◆ 「チャンスコリレーション(偶然相関)」の言葉をご存知ですか?:

Do you know the term "chance corelation" ?



◇    全く不思議ですが、「チャンスコリレーション」あるいは「偶然相関」という言葉をインターネット上で検索しても殆どヒットしません。統計や多変量解析/パターン認識関連で、個々の手法等に関する情報や解説は山ほど出てくるのですが、データ解析を実際に行う時に最も重視すべき「チャンスコリレーション(偶然相関)」に関する議論や討論が殆ど無いことに本当にビックリします。 この原因としては、統計や多変量解析/パターン認識の専門家が主体でWEBを書いており、実際にデータ解析を行って、そのデータ解析の結果やその正しい解析を重視するという立場で考えていないため、あるいはこのような運用技術を重視していないせいかと思います。

◇    データ解析手法自体も大事ですが、実際のデータ解析に利用されてこそデータ解析手法としての価値が出るはずです。 例えば、自動車を作る技術は大切で、機能もディスプレイしても素晴らしいものを作るのは大変な技術です。 しかし、自動車は実際に人を乗せ、荷物を積んで走ってこそ価値の出るものです。 事故を起こさないための交通ルールの整備や、快適に運転できる運転技術の普及、天候や地形に左右されずに確実に移動できる技術、車種が異なっても安全に運転できる技術等、自動車の運用には様々な技術やルールが必要です。

◇    統計や多変量解析/パターン認識も、手法自体の問題も重要ですが、自動車のように一般に普及させ、道具のように広く利用されるためには、これらのデータ解析手法を確実に個々の分野に正しく適応する技術の確立と、その普及も大事と考えます。

◇    確かにこれを書いている私自身、統計や多変量解析/パターン認識の専門家ではありません。これらのデータ解析技術を自分の研究分野(創薬、ケモメトリックス、化学解析、等々)に適用し、素晴らしい、あるいは新しい事実を導き出すという事を実施目的として日々データ解析を行っております。従って、データ解析手法自体に興味があるわけではありません。この立場から、いかに正しいデータ解析を行うか、いかにすれば貴重な情報を取り出せるかの方に注力しています。
    もっとも、私自身はKY法という新しいデータ解析手法を開発しておりますが・・。これは、従来からの手法をそのまま適用しているだけでは、自分が行っている研究分野(安全性(毒性)解析)の解析が出来ないと感じたため、必要に迫られて開発したもので、私のオリジナル手法です。

◇    統計や多変量解析/パターン認識手法を用いてデータ解析を行い、何らかの情報を取り出すという時に最も気をつけなければいけないことは、データ解析手法そのものの新規性や理論ではありません。そのデータ解析が正しく行われているか、その解析が手法の限界を超えてはいないのか、正しい適用をしているのか、データ解析手法以外の適用分野特有の問題をきちんと満たしているのか、等々の様々な問題をクリアしてデータ解析を行う事です。

◇    データ解析を行っていると、学会発表等では新しいデータ解析手法を一歩でも早く適用して、発表したり、複数の手法を組み合わせて新規性を出したり等されており、データ解析の手法に重点が置かれた発表が多いようです。しかし、殆どの研究者の方はデータ解析を道具として使う立場の方々ですし、そういう方々が統計や多変量解析/パターン認識を行ってこそ真の普及ですし、データ解析が社会に役立つ手法となります。そのような方々は、データ解析の本質を考えて、失敗のないデータ解析を行う事に注力するべきです。そうでないと、データ解析からとんでもないしっぺ返しを受けることになります。


◆    「チャンスコリレーション(偶然相関)」は正しいデータ解析を行う上でクリアすべき、最も重要な問題です。また、最小サンプル数の問題や、線形/非線形問題にも関係してきます。



◇データ解析の外見と中身の違いを生じさせる悪魔の要因:「チャンスコリレーション」

The devil factor which induce serious big difference between appearance and contents of data-analysis


◇    チャンスコリレーション(偶然相関)の言葉の通り、全く偶然に解析が成功する事を意味します。つまり、解析目的とは全く関係のない要因によりクラス分類では100%分類が達成され、フィッティング(重回帰)であっても100%の相関が簡単に実現してしまいます。ちょっと喩が良くないですが、外から見るときれいな容器でありながら、中には腐った食べ物が入っているような状況です。外見が素晴らしいので、中に入っている物も当然素晴らしいと考えががちですが・・・・。

◇    データ解析の常識でいえば、100%分類や100%相関は出来うる最高のデータ解析が出来た(外見が素晴らしい容器となった)ことを意味しますが、これが全くの偶然により達成される場合があり、これがチャンスコリレーション(偶然相関)が起こった(容器の中に入っている物が腐っている)結果であることになります。このために、多変量解析/パターン認識のデータ解析では常にこのチャンスコリレーション(偶然相関)に注意することが必要です。



◇失敗のないデータ解析を行うため、常に留意すべき「チャンスコリレーション」の問題:

"Chance corelation" which should always mind in order to make successful data-analysis


◇    データ解析結果の信頼性を高く保ち、後から失敗解析とすることのないようにするには、データ解析の実施にあたり常に守らなければならない留意点がいくつかあります。その中でも、よく議論されるチャンスコリレーション(偶然相関)の問題は、知っていてもデータ解析に夢中になると忘れてしまう事が多いことなので、特に注意が必要です。

◇    チャンスコリレーション(偶然相関)の問題が、実際のデータ解析上でどのような形や問題として出てくるかについてしっかりと理解しておくことが大事です。この問題がクリアされていなくとも、データ解析自体は正常に実行されるので、データ解析を行っている研究者自体が常に注意しなければなりません。結局、チャンスコリレーション(偶然相関)が起こったデータ解析では、そのデータ解析結果の信頼性が極めて低いために、分類結果や、その結果を用いて行う要因解析、さらには予測等の作業の一切が無駄になります。自分の仕事に失敗結果のしわ寄せがきてしまいます。



◇チャンスコリレーションが起こっていることはどのようにしてチェックしますか:

How to check that chance corelation has happened ?


◇    一般的にチャンスコリレーション(偶然相関)を起こしているデータ解析結果は、データ解析過程で利用するデータ解析の指標(分類率や相関係数等)が良好な値となっている事が多く、このためにチャンスコリレーション(偶然相関)を起こしていることに気がつかずに、その解析結果を信用して次の解析に進むことが多くなります。このために、最終的なデータ解析結果が示す様々な要因を検証した段階で、データ解析結果と新たな実験結果が全く合わないという結果となります。この段階でやっとチャンスコリレーション(偶然相関)の問題に気がつくか、気がつかなければデータ解析自体への不信感が芽生えることになります。

◇    データ解析過程で意図的にチャンスコリレーション(偶然相関)を起こして良好な結果を得る。この極端な事例が、先に述べた重回帰解析における100%相関の出し方の秘訣です。

◇    この事例でも述べましたが、解析結果は100%相関なので最高の解析結果が出ています。丁度、容器が九谷焼の最高級品になった感じです。ですが、なんかおかしいですね。先の事例では、解析目的と全く関係のないパラメータを使っていたので、すぐにおかしいことに気が付きます。しかし、日常行う解析では100%相関を達成することは殆どなく(あると殆どの人は、データ解析自体を疑いますが・・)、代わりに高い相関係数が達成されるため、解析が良好と考えます。さらに殆どの場合は、解析目的と何らかの関係があると考えられるパラメータを用いて解析を行いますので、解析結果が変だなー(つまり、チャンスコリレーション(偶然相関)を起こしている:中身が腐っている)と感じることは少ないようです。

容器の中身を見ることのできるレントゲンを使う:

The X-rays which can see the contents of the vessel are used

◇    データ解析の質を評価する指標(分類/予測率や相関/決定係数)がどんなに素晴らしくとも、これは容器の外見を評価するもので、その容器の中に入っているものの評価を意味するものではありません。この、データ解析で最も重要な中身の評価はどのようにするのでしょうか。

◇    一般的に、中の見えない容器の中身を評価する手法として工学的には非破壊検査がありますが、このとき主として利用されるレントゲン技術のようなものが、チャンスコリレーションにも存在します。これは、単なるインデックスですが、このインデックスの存在を知ってデータ解析を行っている人は少ないようです。特に、少ないサンプルを扱い、多数のパラメータを使うチャンスの多い研究分野でデータ解析を行う場合は注意が必要で、このインデックスを常に意識する事が必要です。

チャンスコリレーション(偶然相関)を避けるための指標:「信頼性指標」

What is the index for avoiding chance corelation?

It is the "Index of Reliability"


◇    このチャンスコリレーション(偶然相関)が起きているか否かをチェックする事は簡単です。データ解析に用いたサンプルの数(S)と、パラメータの数(P)に留意するだけで良いのです。実際にはサンプルの数(S)を、解析に用いたパラメータの数(P)で割った値(信頼性指標(R): Index of Reliability)をチャンスコリレーション(偶然相関)が起こっているか否かの指標とします。この指標は二クラス分類の場合とフィッティング(重回帰)の場合とで若干異なります。

二クラス分類の場合 ⇒ 

信頼性指標値(R = S/P)は ≧ 4

フィッティング(重回帰)の場合 ⇒ 

信頼性指標値(R = S/P)は ≧ 5から6


◇    上記の信頼性指標を常に念頭に置きながらデータ解析を行う事が必要です。これが守られれば、チャンスコリレーション(偶然相関)の問題に悩まされることなく、良質のデータ解析を行う事が出来ます。フィッティング(重回帰)の場合の信頼性指標値は国際的には5ですが、日本国内ではより厳しい基準となる6が使われます。特に、構造-活性相関等の研究分野では厳しくなりますのでご注意ください。一方で、構造-活性相関分野ではチャンスコリレーション(偶然相関)の問題が一部にあったとしても、要因解析の内容や、他の解析結果との総合的な議論や討論のレベルで、この問題の扱いがケースバイケースで判断されます。

◇ 上記の信頼性指標の値は、いわばデータ解析を行う時の最低条件です。実際にこの値よりも大きな値となるようにする事が必要です。この信頼性指標の値が大きいという事は、実際に起こる確率が極めて低い事象であることを意味します。言い換えれば、「事実上起こり得ない事が起こった」という事です。この起こり得ない条件下でありながら極めて高い相関係数や分類率が達成されているならば、いわば「奇跡が起こった」事になります。これは、解析目的と用いたパラメータ間に何らかの強い必然性/相関があったために起こった現象と言えます。これは、安心して要因解析が行えることを意味します。

◆ 安心して、新しい事実を発見し、自身を持って発表しましょう。R(信頼性指標)値が大きければ、あなたの行ったデータ解析の解析信頼性は極めて高いと保証されています。データ解析の品質に関して誰も疑問を挟む余地はありません。


文責:株式会社 インシリコデータ 湯田 浩太郎