ノーベル化学賞が発表され、以下の三名に授与されました。受賞内容は「人工知能(AI)を用いたタンパク質の三次元構造予測」です。この受賞対象となったソフトは「アルファフォールド」です。
受賞された先生はデビッド・ベイカー氏と、ジョン・ジャンパー氏およびデミス・ハサビス氏です。受賞の内容等はWEB を参照していただければ詳細がわかります。
タンパク関連研究は直接関与していないので明確にはわかりませんが、以前より「アルファフォールド」のタンパク三次元構造創出精度は突出していると聞いておりました。今回の受賞にて、ノーベル賞を受賞するほどの高い精度を持ち、これが実際に評価されたということとなります。
*ノーベル賞の受賞基準が大きく変化している: ノーベル物理学賞に続いてノーベル化学賞でもAI関連技術に関する受賞であったことは、本当に時代が大きく変化していることを感じます。私も、化学分野で昔からデータサイエンスによる創薬研究を続けてきており、同時に機械学習という観点からニューラルネットワーク等の展開、開発等続けてきて、AIとも深く関与してきました。化学分野では化合物を扱うことが必要で、この化合物の扱いでアナログ的な観点とデジタルとの融合が大事となります。この点で様々な技術的困難さが存在しますが、頑張ってゆきたいと考えます。
*ソフトウエアもノーベル賞受賞の対象になる: 今回の受賞、特にノーベル化学賞で特筆すべき事項として、AIでの受賞もありますが、特に驚いたのはソフトウエア自体が受賞したということです。通常の常識として、今回の発表があるまでソフトウエアでノーベル賞の受賞はありえないと考えておりました。アルファフォールドは確かにAIシステムであり、この点が強調されています。しかし、たまたまAI の適用で革新的な高い精度と実績を出したということであり、真の受賞理由はタンパク三次元構造創出の精度を劇的に高めた事であり、この点が評価されています。これは、将来的に更なるアルゴリズムが出て現在のアルファフォールドを追い越すような実績を出せば、新たなノーベル賞も考えられるわけです。
*ソフトウエア開発研究の意義が大きく変化する: 今回の受賞はソフトウエアを開発する研究者にとり大きな励ましとなります。ソフトは構築しても論文にならないということで、研究とは一線をおいて扱われてきました。この基本が、ソフトウエアでも波及効果や精度が高ければノーベル賞の受賞対象になるというように大きく変わりました。ソフトは研究実施上での単なる道具にしか過ぎないという概念が変わり、ソフト自体の構築もノーベル賞の対象となることが示されました。
ちなみに、私が以前より実施して開発してきたデータサイエンスの KY (K-step Yard sampling)法は、基本原理上常に100%分類を実現する手法です。予測率向上を実現すれば、現在実施されている毒性(安全性)・薬理活性・物性評価でも大きな成果が出せるはずです。頑張ります。
*創薬全体から考えると、その第一関門が開かれた段階です: 創薬を実施しているとお分かりかと思いますが、タンパクの三次元構造がわかれば創薬完了というほど簡単ではありません。次にドッキングシミュレーションが待っており、この解決が大変です。これが完了して化合物構造式が決定されたとしても次は、私の行っているADMEや安全性評価のクリアが必要です。さらに、フェーズ1から3の臨床試験が待っています。今後、残った部分でのAI適用による創薬開発精度の向上が目指されますが、今回のノーベル賞の授与により、AIを含めたソフト関連の展開は急速に広まってくると考えます。やりがいもあるし、とても楽しい時代になりつつあると感じます。
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