「第24回インターフェックスジャパン」にて、株式会社創晶の社長である安達宏昭先生と話すチャンスにめぐまれました。安達先生は創晶の基本技術であるレーザー光を用いたタンパクの結晶化技術を開発されております。この技術により、従来は極めて困難であったタンパクの結晶化を実用レベルのものとし、タンパクの構造決定に大きな役割を果たしてきました。X線結晶構造解析によるタンパクの構造決定には結晶化したタンパクが必須であったため、創晶の技術は極めて重要なものでした。
創晶のタンパク結晶化技術は液状のタンパクにレーザー光を当てることであります。タンパクの結晶化は暗い場所で長期間静置することが常識であった私たちの頭の中では仰天動地の技術でした。即ち、レーザーを照射すればタンパクは変成して、結晶化どころか壊れてしまうのが常識です。しかし安達先生は、フェムト秒レベルでレーザーを照射することで、タンパクに刺激を与えて結晶化の切っ掛けを生じさせ、実用的レベルでの結晶化を実現されました。
異分野の技術を導入することで、常識を覆して素晴らしい実績を残されたという点で、研究のブレークスルーには異分野の技術の融合がしばしば素晴らしい結果をもたらすということの大きな事例になります。
現在はタンパク結晶構造の決定には「クライオ電顕」が用いられます。これにより、タンパクは結晶化することなく構造決定を実施できることが可能となりました。この成果により、2017 年にノーベル化学賞が3人の先生に授与されました。
この事実を考えると、タンパクの結晶構造解析の主流はX線解析であることを考えれば、タンパクの結晶化を実用レベルにした創晶の技術もノーベル賞レベルかなーと考えます。なお、電顕では電子線をタンパクに照射することが必要ですが、単純に電子線を照射するとレーザー同様にタンパクが変成してしまいます。こちらは、結晶化せずにタンパクを水溶液の極低温・凍結状態で測定することでタンパク変成を解決して、構造決定に導いています。