QSAR(定量的構造-活性相関)を提案し、手法として確立された京都大学名誉教授である藤田稔夫先生が8月22日に逝去されました。当時私は海外で開催されていたWC10会議(8月20日ー24日、Seattle、USA)への参加とポスター発表で日本にはおりませんでしたため、ご報告が遅れました。
創薬に関係した研究者であればQSARという言葉を知らない人はいないでしょう。最近では毒性評価研究分野でもQSARという言葉が重要なものとなっています。世界的にはQSARはHansch-Fujita法として知られております。残念ですが2011年にHansch先生が逝去されており、今回の藤田先生の逝去によりQSARのルーツとなられた先生方がおられなくなってしまいました。
QSAR以前はSAR(構造-活性相関)という言葉がありました。これにQというアルファベットをつけてQSARという言葉を創薬研究分野に定着させたのが、Hansch先生との共著の論文であり、Hansch-Fujita法と呼ばれるのはこの論文の存在によります。また、QSARは手法の大きな概念であり、SARという構造-活性相関を定量的に行なうという意味のQ(Quantitative)を付けたものです。創薬研究がSARからQSARに進んだことで、それまでは単なる概念的な創薬研究に論理的なアプローチをつけ、創薬研究を大きく進歩させました。
改めまして藤田先生のご冥福を祈ります。