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2014/02/18

hiPSCのセミナーに参加発表いたしました: Report of the hiPSC seminar


  2月13日(木)に開催された国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)主催の公開シンポジウム「ヒトiPS細胞の創薬プロセスへの応用」に参加しました。 私は、NIHSの石田誠一先生との連名で「hiPSC-肝細胞とインシリコのデータ融合による安全性予測/メカニズム解析に向けた考察」というタイトルで講演発表いたしました。

 ヒトiPS細胞の応用では現時点では再生医療がメインとなって展開されています。 この展開に加え、今後は創薬関連分野への展開が急速に広がると考えられます。 この理由は、ヒト由来の細胞や臓器を創薬研究に利用できることが大きな要因となります。

1.動物実験のヒトへの外挿問題の根本的解決が可能となる
  創薬研究では、合成された化合物が目的薬理活性を有するか、良好なADME特性を有するか、さらには毒性や副作用が無いことをチエックするのに極めて多数の実験を行なう事が必要です。 この実験の大部分で動物実験が行なわれています。 薬の最終利用者は人であるので、動物実験で得られた実験データをヒトへの実験に外挿することが必要となります。 この動物から得られた実験結果をヒトへの実験へと外挿する問題は、様々な点で極めて困難であり、現在でも確実に人への外挿をすることは出来ておりません。 
 この創薬における最も厄介な問題を、ヒト由来の細胞や組織、臓器を利用する事が出来るhiPSCを用いることで完全に解決する事が可能となります。 また、個人由来の細胞を用いた実験が簡便に出来るようになれば、個人単位で薬物を調整する事が可能となり、遺伝子に頼らない真の意味でのテーラーメード医療が実現する事になるでしょう。

2.動物実験フリーの創薬が可能となる
  現在、EUでは化粧品等の分野では動物実験結果を規制当局に申請する事は出来なくなっております。 これは、動物愛護の観点から、人に適用する医療と関係の無い化製品等の申請時に必要となるデータを、多数の動物の犠牲による動物実験データを使うのは望ましくないという考えに基づいています。 動物愛護に基本をおくこのような考えは、医療分野にも少なからず影響し、可能な限り動物実験に用いる個体数を減少する事が時代の要請となってきています。 従って、医療分野といえども多数の動物を用いての実験は徐々に減少方向に向かいつつあります。
  このように、動物実験そのものも実施条件が厳しくなっている上に、動物から人への解決困難な外挿問題も存在しています。 hiPSCを用いることは、動物実験をする必要が無くなることを意味し、前記動物データのヒトへの外挿問題の根本的な解決が可能となり、さらには動物愛護の観点からの動物実験禁止への根本的な対応が可能となります。

  安全性(毒性)スクリーニングという観点でhiPSCを考えるならば、再生医療に要求されるような非常に高いレベルでの細胞の品質と純度が要求されるわけではないと考えます。 例えば変異原性試験のAmes試験について考えるならば、菌の種類が複数存在し、菌の種類単位で変異原性を決めるのか、あるいは複数の菌のデータを合わせた結果を用いるかで、スクリーニング結果は異なってきます。 現在実施されている安全性(毒性)スクリーニングの実情を考えるならば、実験に用いるhiPSCの品質の問題は確かに重要ですが、スクリーニングの実施目的は何であるかを考えた時、再生医療で求められる品質と必ずしも同じレベルが求められるとは考えにくいと思います。
  薬理活性やADME、安全性(毒性)に関する化合物スクリーニング実施時の、実施目的にかなうhiPSCのあるべき姿というものを追求する事が大切であると考えます。 いずれにしても、動物実験フリーという条件は、従来の動物実験を用いたスクリーニングが抱えていた動物からヒトへの外挿問題と、動物愛護という極めて解決困難な二つの問題を一気に解決する可能性を有しております。

以上

文責:湯田 浩太郎
2014.2.18


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