インシリコデータ株式会社関連ブログ;Blog of the In Silico Data Ltd..

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2013/05/30

インシリコ技術適用上での留意点: Caution of technical points on the in silico technology

  
◇ インシリコ研究実施上での留意点(ドッキング):
Must pay attention that insilico research on docking approach

  デモやカタログに書かれているスペックと、実際に自分が行なった時のスペックの違いに関して、以前このブログでも書かせていただきました  この時、たとえカタログで用いているのと同じ構造式の化合物を用いても、コンピュータ上での処理上の問題から開発元とユーザが個別に行った実験とに大きな差異が出ることを話しました。 
  これは、化学多変量解析/パターン認識による構造-活性/ADME/T/物性相関研究分野のみならず、インシリコ創薬におけるもう一つの大きな手法であるドッキングにおいても同様の問題があることが報告され、注意が喚起されています。 これは、以下のブログに書かれていました。
http://medicinalchemistry.blog120.fc2.com/blog-entry-783.html

  一般的に、コンピュータを通せば何か素晴らしいことが出来て、素晴らしい結果が導き出されるようなイメージが先行しているようです。 しかし、現実的にはアナログ的な現象をデジタルな世界に移し替える、この時に発生する様々な問題の理解と解決なしに期待だけ先行するのは、非常に危険であることを理解しつつ、インシリコ技術を利用する事が大事と考えます。
  だからと言って、萎縮したり、過剰反応でインシリコ技術を嫌ったりする必要はありません。 インシリコ技術を正しく理解し、その優れた特徴と限界を知り、最大限の成果を得る工夫や技術力をつければ、上記問題は克服できますし、従来手法では得られなかった素晴らしい結果を享受できることも事実です。 この問題はインシリコ分野に限らず、全ての研究分野で言えることです。
  即ち、市販されているソフトウエアを単純に動かし、結果を鵜呑みにするだけでなく、そのバックにある基本技術を理解し、その限界や留意点を常に意識し、現在自分が実施しているインシリコ実験手順や結果に対して冷静に評価する習慣を身につけるという態度が重要です。

  WETな実験でも、Journalに報告されている実験が再現できないことがあると言われます。 私はそんなことがあるはずはないと思っていたのですが、学生時代に必要に迫られてある世界的に著名な先生が出した論文と同じ合成実験を行ないました。 しかし、どんなに努力しても再現できませんでした(収率が論文同様の高い値とならない)。 合成には、文章中では表現できないノウハウが存在し、時にはその事実が合成の行方を左右する場合があるという事を実感させられた瞬間でした。 特に、世界的に著名な先生方の論文はその傾向があるのかなーーと思いました。 あまり認めたくありませんが、自分の合成技術とのギャップが大きかったということが原因と、今では考えていますが・・。 

  インシリコの世界も、全く同じです。 Journalやカタログに表だって書かれていない様々な留意点や、論文以前の前提事項が多数存在することは事実です。 残念ながらこのような事実について表だって議論される場や機会は極めて少ないようですが・・・。
  先のブログには「痛烈批判」と書いてありましたが、ブログに書いてあった内容は批判でもなんでもありません。 単に、ドッキングを行なう時に知っておくべき、留意すべき「前提事項」にしかすぎません。 これらの事実を知った上でドッキングを行なう事が必要だというだけです。 
  私が以前に本ブログでも書きましたように、化学多変量解析/パターン認識による構造-活性/ADME/毒性/物性相関研究においても全く同じように、知っておくべきことや前提事項があることは事実です。 誤解してもらっては困りますが、先に私が行なった議論は手法そのものを批判したものではありません、単にインシリコ実験をする前に知っておくべき当然の事実を述べたにしかすぎません。

  インシリコ実験を行なう時は、それぞれの分野でこのような事実があることを認識しつつ、常に自分のインシリコ実験結果を再見直しする習慣を身につけ、論理的な整合性の評価や不整合性等が無いかを自問自答しつつ実施する事が大切です。 
  人はついうっかりすると自分の都合の良いように解釈しがちですから・・・。


文責:株式会社 インシリコデータ 湯田 浩太郎






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